「犯罪者」のキャラクター
LIKEMAD_GAMESではこれまでに、金・暴力・薬・犯罪。
こういったアンダーグラウンドな社会の闇のような作品を世に送り出してきました。サスペンス、ミステリーと言うジャンルの関係上、犯人と言うものがいたり、あるいは犯罪に手を染める敵勢力が登場します。
今回は自分の制作メモや整理をかねて、2作品の犯罪者キャラクターを比較して色々書いてみたいと思います。
『SALVATION 月影に灯る光』と『Loose Lipsシリーズ』
LIKEMAD_GAMESの代表作である『SALVATION 月影に灯る光』と『Loose Lipsシリーズ』
どちらも陰鬱で閉塞感があって、物語の持つ雰囲気は似ています。
なによりも2つに共通しているテーマが『死刑制度』です。
どちらも死刑囚が登場します。
JOKER VS Cedric(プロフィール)
(c)イヅハラジュウゴ | ||
名前 | デイルJr. | セドリック・スウィーニー(セディ) |
あだ名 | JOKER | 40Killer |
年齢 | 23 | 25 |
性別 | 男 | 男 |
逮捕時の年齢 | 13 | 25 |
罪状 | 殺人、傷害、テロ行為、国家反逆…多数 | 殺人、死体損壊、車両窃盗、 |
被害人数 | 130人以上 | 33人 |
家族構成 | 大企業のCEOの父、元女優の義母、義弟 | 売春婦の母 |
評判 | 被害者の多くが子供で、特殊能力を与えてくれたと神格化の傾向あり。ユーモアを持ち合わせた性格と優秀な頭脳、行動力の影響で虐待家庭の子供からはヒーローと讃えられる | 甘いマスクと懐っこい表情で刑務所グルーピーを大量に発生させた。捜査への協力には批判もあり、被害者遺族の憤りが高まりつつある。一方で似た境遇の青年達が社会への報復に模倣をはじめた |
好きなもの | カタツムリ、イタリアワイン、クラシック音楽、僕ちゃんと美しいもの | トール、ミルク、サンドイッチ |
嫌いなもの | 愛と大人 | 愛と女 |
こうして見ると一見、とても似ているように見えます。
でも成り立ちや、根本的な部分、犯罪に対する考え方、被害者へ対する意識、何もかもが違う。おそらく二人が意気投合することはない、ある意味真逆の人間のように思えます。
『SALVATION 月影に灯る光』JOKER
XX51年にテロを起こした最重要危険人物。
「悪しきものから世界を取り上げる。これは聖戦だ」と言う予告文から、当初民族統一を掲げる反政府組織の犯行と思われていたが、逮捕されたのは当時13歳の少年、デイルグループのデイル社長の子息であった。
特殊犯罪収容室で死刑の執行を待っているJOKERこと、デイルJr.
自分で《JOKER》なんて幼稚なあだ名をつけるところは、いかにも少年犯罪者らしい。
自己陶酔し、劇場型犯罪を犯す典型的なナルシスト。13歳で大量殺戮生物を生み出した天才であり、多くの大人を殺害した大量殺人者。
相手を貴様と呼び、自分以外はアホだ、バカだと愚弄する。
ナチュラルハイで、ユーモアも持ち合わせている。
非常にクレバーな人間です。
Loose Lipsでは、一人目のトッドに継承されているキャラクター性だと思います。
以前「SHERLOCKのモリアーティに似ているキャラだけど、そこはどうですか?」と聞かれた事がありますが、制作時には未視聴だったので偶然でした。
SHERLOCKのモリアーティのキャラはいいキャラですよね。
SHERLOCKのモリアーティと言えば、”did you miss me?”
どちらかと言うと少し幼稚な性格は、セドリックの方が近いかも。
JOKERは、誰からも愛されなかった人間故に、自分で自分を愛するしかなかった可哀想なナルシストです。
JOKERの犯行理由
父親は大企業のCEO。母親は幼い頃に亡くなっています。
父親が再婚した女性は、有名女優で連れ子であるJOKERことデイルJr.は、寂しい子供時代を過ごしました。父親の激しい躾や、義母と生まれた義弟への憎悪など、人格形成に歪みが生じました。
自分のような子供達を救ってやりたい。
これが彼の犯行理由です。13歳と言う未熟な年齢もあり、聖戦と言う言葉を使用していることからも、悪いことだと思っていない事は明らか。自分の正義のために大量の大人を殺害しました。
そして、残った子どもたちには遺伝子操作プログラムによって、特殊能力を与えたのです。
セドリックと違い、桁外れに裕福な家庭で育ちました。
だからこそ大量殺戮生物を生み出す研究費用や、人の買収を行うことができ、一人でもあれだけの犯罪を起こすことが可能だったと言うわけです。
個人的には、甘えてるなぁと。
結局は父親の金で犯罪を犯し、服役後も父親の計らいにより豪勢な暮らしをしています。そこを批判する目的で設定したキャラ付けではありますが、非常に哀れな結末だと思います。地下室で行われている採取も含め。
孤独な人間だからこそ、派手に自分を演出し、間違った方法で仲間を得ようとした。普通の人間なら失敗に終わるところですが、JOKERはそれができる天才だったことが悲劇だったと作中でも語られています。
JOKERと愛
JOKERの場合は、自分の理解者であると思ったサラ博士を自分が最も美しいと思う化け物へと遺伝子操作し、作り変えてしまった。愛の形が歪んでいます。
彼には女性や男性を愛すると言う感覚が欠如し、自分しか愛せません。
男女間の営みに対して必要以上に嫌悪感をもっていて、愛し合う行為、愛そのものを嫌っています。
ここはセドリックにとても似ていると思いますが、彼の場合は父親の行き過ぎた躾によって、愛しているからこそ苛虐するようになってしまった。サラ博士への人体実験は、ある意味彼なりの愛情表現だったと思います。
JOKERと神
JOKERにとって神とは、自分自身です。
自分を過信しているので、崇められることに興奮と快感を覚えるタイプ。僕ちゃんに頭を垂れ、跪けと思っています。
作中で自身を《創造主》と呼び、生み出す喜びを感じています。
事実、MOON CHILDと呼ばれる特殊能力(JOKERの遺伝子)をもった子どもたちを生み出したわけです。何世代にも渡り、自分の遺伝子が彼らの体を変異させ続けている。まさに子供ですよね。
誰とも交われない人間が遺伝子を残す。
この辺りは、セドリックと大きく考え方が異なっています。
『Loose Lipsシリーズ』Cedric
ウルティモアとその周辺ローズヒル地区で起こったシリアルキラー、セドリック・スウィーニーによる殺人事件である。
事件の期間は1993年〜94年と言う非常に短い期間ではあるが、被害者の数は33人にも及んだ。
これほどまでに衝撃的な事件だったというのに、人々の記憶にないのは何故か。それにはいくつかの理由がある。
ひとつは被害者が身寄りのない売春婦ばかりだったと言うこと。
かつて33人の女性を殺害した40Killerこと、セドリック・スウィーニー。
主人公のカサイには愛称のセディで呼ばれています。
JOKERと違って、40Killerとはマスコミがつけたあだ名です。
自分で自分のあだ名をつけることはありませんが、カサイにセディと呼ばれることを好んでいます。
社会的弱者であるセックスワーカーを標的にし、殺害しやすい相手を選んで殺害しているように見えますが、実は達成できなかった母親殺しと関係しています。
彼の母親は薬物中毒者の娼婦で、そんな彼女から日常的に虐待を受けていました。その母親が病死し、達成できなかった母親殺しを売春婦達を殺害することで代理的に目的を果たしていました。しかし、33人を殺害しても彼の満たされない思いを拭い去ることはできませんでした。
この上のゲーム内では、詳しく犯行を描いています。
JOKERと明らかに違う点は、SFの世界の話ではない部分。
リアルな犯罪、より現実に近い犯罪やキャラクター性をもっています。
Cedricの犯行理由
とにかく彼の全ての中心は《トール・カサイ》です。
強迫性障害に近い精神状態で、殺さなければいけないと思い込み犯行を重ねていた部分もありますが、ある日テレビで観た《あの雨の夜の男――トール・カサイ》に会うことが彼の目的でした。それもただ会いたいと言う親情とは別の理由がありました。
セドリックもJOKERのように何かを救いたいと思っていたのだとしたら、それは自分自身です。殺人を止められない自分をカサイに止めて欲しい。カサイに会いたい。
セドリックにとって殺人は手段であり、目的ではありませんでした。
その一方で「サイコ野郎とは違う」と言いながら、殺人を楽しんでいた部分もあります。銃を使わずにわざわざナイフで惨たらしく殺害すると言うのは、相当殺人を楽しんでいる傾向にあると言うことです。
彼が女性と性行為を行うことはありません。もし彼が女性にも性的な魅力を感じていたら、レイプを行っていたと思います。
1作目内でカサイも口にしていましたが、ペニスが勃たないからナイフを突き立てたんだろうと。
犯罪の傾向としては、その線で間違いないと言えるでしょう。ナイフを女性に刺すと言う行為は強姦そのもので、セドリックは快楽殺人者とも言えます。実際にカサイを騙す為、遺体に性玩具でレイプをしています。
セドリックにとって、他人の命はどうでも良いものです。同じく自分の命もどうでもいい。被害者をゴミと呼び、自分の目的を達成するためなら、平気で犯罪に手を染めます。まるで息をするように。
それでも罪悪感はあります。後悔もします。でも自分が可哀想だと言う自己憐憫なだけで、被害者が可哀想だから後悔するわけではありません。
JOKERは戦いと表現した殺人ですが、セドリックにとってはただの殺人でした。
この辺りはセドリックのミステリアスな部分や《普通》であることの怖さを表していると思います。エドがそれを恐れていましたよね。
利己的ですがナルシストとは言えない。
設定では祖父に愛されていた時間があったとしています。祖父の名前がセドリック。
それでも目立つことや注目を浴びることは好きで、承認欲求や自己顕示欲は強い。それは彼のキャラデザにも現れていて、太い眉毛がその証。
JOKERもセドリックも愛されなかった故に人格形成に歪みが生じ、愛されたいと言う思いが歪んだ形で吐き出された末の犯行だと言えるでしょう。
Cedricと愛
JOKERと同様に愛に対して嫌悪感を抱いています。
それでもカサイへの執着心は愛情にも似た感情であることは間違いないと思います。もちろんそれだけじゃありません。彼の歪んだ欲望や復讐心など、もっと破壊的で複雑な感情を抱いています。
感情は複雑でも、愛に対する見方はわかりやすい。
『愛なんてくそくらえ』
その言葉に全てが凝縮されています。
JOKERと唯一違う点は、性行為に対する考え方。
セドリックはその辺に関しては健全なので、いいと思った相手と寝ることもあります。それでもカサイとの《雨の夜》を越える相手が見つからず、思い出の中のカサイを求めて続けています。
Cedricと神
セドリックは神を信じていません。
トッド達に神と崇められることについても悪い気はしないけど、基本どうでもいいことだと捉えています。模倣されることは嫌っていますが。
先程も書きましたが、セドリックの犯罪には信念なんてものはありません。
全て自分の快楽や都合の為。非常に利己的で、よくいる犯罪者です。
子供に対しても、自分の遺伝子を残したいとは思っておらず反キリスト的。
ゲイなのでそこはそうなんでしょう。
しかし妙なもので、神を嫌っている彼を神格化するトッド達や、熱を上げる刑務所グルーピーが跡を絶ちません。
結局はルックスがいいので殺人鬼とは言え、倫理観に欠けた欲望に忠実な連中が集まると言うこと。
現実にもそういうことがあるわけですが、全く理解ができません。
そのルックスを武器にカサイに泣きついたり、自分に有利な条件を求めたりと使い方を熟知しています。セドリックの生き延びる術でしたから。
顔がいいと大抵の物事は上手くいきます。軽く微笑むだけで相手をコントロールできる。十分すぎるメリットですね。
でも小学校すら出ていないので、知識に偏りがあり、論理的に動いているわけではありません。全て経験と感覚で対処しています。そこがJOKERとは種類の違った天才的な部分であると思います。案外、野性的なのかもしれない。
論理的な天才テロリストJOKERと感覚的な天才Cedric。
同じ殺人犯でも、随分とキャラクターが違いましたね。
死刑執行
JOKERもセドリックもどちらも一向に死刑執行がされず、市民や被害者遺族は複雑な思いを抱いています。
SALVATIONでは、メグと言うキャラクターが強い嫌悪感を示していました。
Loose Lipsでも、続編で死刑について深く描いていくことになります。
【ネクストゴール挑戦中】『Loose Lipsシリーズ』クラウドファンディング
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